ライフレジリエンス領域開拓にむけたコミュニティの支援環境モデルの開発

プロジェクトの概要

  • 少子高齢化,低成長,人材不足の時代のなかで,1つは課題が大きくなる前に早期に介入(予防的介入)すること,もう1つは本人の生きる力を引き出す支援(エンパワーメント)が重要である。しかしながら,この段階で利用できる公的支援制度が限られており,たとえば家族会などの自助グループや子ども食堂・高齢者サロンなどの居場所といったコミュニティの支援環境の協力を得て,支援が行われる。
  • このようなコミュニティの支援環境について,その構成要素である,人的資源(担い手の高齢化や自治会加入率の低下),空間資源(公民館等施設の縮小や老化)など,多くの課題を抱えた状態である。例えば,ソーシャルキャピタルについて,外部からコミュニティの状態を評価することはできても,如何にしたらソーシャルキャピタルを増やせるのかは,わかっていない。
  • ライフ・レジリエンス領域を確立させるためには,その基礎的研究として,エンパワーメントの実践を通じた,分野融合によるコミュニティの支援環境を改善・充実させるモデル開発が必要である。
  • このプロジェクトでは,コミュニティの支援環境を改善・充実・評価するモデルを開発する。次の3つの論点を軸に構成されるものとして,仮説モデルを提示する。A:個別・地域課題のアセスメント(特に支援環境に関連した指標と基準),B:支援環境と個別・地域課題解決のパターン化,C:利用した支援環境の構成要素の変化(増減)である。

研究の全体イメージ

研究計画

  • 既存学会での学術集会におけるPD・分科会:各学会の年次大会等において,若手発意のミニ集会やパネルディスカッションの企画公募がある。本研究会における分野の異なる研究者を加えて,既存学会のなかで問題提起を行い,個別領域との立ち位置とライフ・レジリエンス領域を推進していくアドバイスをいただく。
  • サイトビジット:上述の領域合宿の一環で,それぞれの研究フィールドを訪問して,どのようなアセスメントが行われているか,お互いに協力できる技術はあるか,どのような介入が求められているかなど,オンサイトで検討して,研究領域の枠組を強化していく。
  • 定例会議と領域合宿:研究代表者らとの定例会議のほかに,年に2回程度,領域を構成する研究者,各フィールドの実務家,当事者,アドバイザリーボードのメンバー等を集めて,1泊2日程度で,研究領域合宿を行う。それぞれの研究の進捗報告とともに,アドバイザーからの問題的などをいただき,専門分野の異なる研究者らでチームをつくり,アセスメントの在り方,ものごとを多様な視角から捉える態度などを養う。

研究内容

  • ライフ・レジリエンス領域における,コミュニティの支援環境への介入アプローチは,主に2つである。1つは個人の課題群からのアプローチである。具体的には,障害・慢性疾患班(代表:高橋),任意後見と伴走型生活支援班(代表:税所)による研究である。もう1つは,パブリックヘルスの観点に立つ地域の課題群からのアプローチする場合である。具体的には,地域マネジメント班(代表:木全)として,公衆衛生学の他,教育学,都市工学の研究者が進めていく。
  • 各計画研究における実践研究の成果をもとに,A:個別・地域課題のアセスメント(特に支援環境に関連した指標と基準),B:支援環境と個別・地域課題解決のパターン化,C:利用した支援環境の構成要素の変化(増減)の研究成果の知見を統合し,コミュニティの支援環境を改善・充実・評価するモデルの開発を行う。
  • それぞれの班では,以下の研究を実施する。A.各計画研究における固有のアセスメント手法において,コミュニティの支援環境は如何に評価されるか。またそれはいかなる指標と基準で行われるか。 B.個人や地域の課題解決に対して,いかなるコミュニティの支援環境を使うと,いかなる成果(生活の質の向上や地域課題の解決など)が出るか。 C.Bの介入により,コミュニティの支援環境を構成する要素(権限財源,人的資源,空間的資源)は,どのように変化し,なぜ変化したか。その際,Aで示した指標や基準は変わるか。変わらないとすれば,別の指標や基準への変更が必要か。